ずっとそばにある本 ⑥『新総合国語便覧』 第一学習社(昭和53年初版/昭和60年9版)定価580円(消費税導入前)

これは、通常の書籍ではなく、学校の図書で国語科の資料集である。
しかも、「審査用見本」である。

教科書や資料集は、その正式な発行にあたり、事前に学校側へ参考として

このようなものが送られてくる。教員は、幾つかのものを選定して、

次年度の教科書や資料集などを決めるのであるが、この本もその1つである。

私が高校生の頃、何気に校舎の裏を歩いていたら、

大量の本が捨てられていた。

「何だコレ???」と思いながら物色していて、拾った本がこれである。

この国語便覧を自分の専門教科外にかかわらず手元に置いていたのは、

その内容が非常によくできていて面白かったからである。
細かい部分まで正確にまとめられていて、写真も綺麗である。
夏目漱石芥川龍之介の解説については、その作家の人生の表裏を

分かりやすく解説されている。芥川が恒藤恭と親しかったことは、

市大に入学する前から知り、まさか大学史資料室という場で、

恒藤恭についての研究のほんの一部(デジタル化など)をお手伝いしたことは、
この本と何らかの縁で繋がっているような気がした。

武蔵野の写真は、素晴らしい。
小さい写真であったが、「武蔵野」のイメージを増幅させるものである。


学校という現場では、さまざまな紙物質があり、
その多くが、塩漬け・放置・破棄・放置されているように思える。

現場によっては、(異常なほど)酷い状態があるのは事実…。

当時、たまたま職員室か準備室の大掃除で出たものであろうが、

縁あって手元にあることに感謝している。そうした縁がある本なのである。

そういえば、前任校でも教科書選定にあたり、

この教科書を推挙した。

しかし、結果は見送られたけれども、内容は生徒にとって新鮮かつ、

教える側にとっても新学習指導要領の則れば、いいものである。

高等学校公民科 公共 - 教育図書教育図書


私はこの本を、いつまでも、売らないし、捨てないし、貸したり、譲らないであろう。