戦前戦後の生活用品の歴史

近代ニッポンの水まわり―台所・風呂・洗濯のデザイン半世紀

近代ニッポンの水まわり―台所・風呂・洗濯のデザイン半世紀


現代では当然のように生活必需品となっている洗濯機や台所の流し、
浴槽、風呂釜についての戦前戦後史を豊富な写真や図面と共に解説している。
占領期のことについての解説は少ないが、どちらかと言えばマイナーな備品、
生活という現場に根ざした自動化製品の歴史を知る上では面白い本である。
博論の書籍版であろうが、一般的な生活史として読んでもいいだろう。
個人的には製品の開発の経緯や、実際に現代では一般的な家電製品が、
どのようにして市場に登場し、日本経済にどのような効果をもたらし、
現代日本の生活自動化のステップとして、
もう少し詳しく解説が欲しかったようには感じる。


浴槽は木製・ステンレス・琺瑯と随分と材質が変化している。
長州風呂ってのがあったが、これが五右衛門風呂の進化した形で
入湯する大きな風呂釜と、掛け湯や洗濯などで使う浸かる釜より
小さな孫釜があるものがある。『となりのトトロ』の
サツキとメイの家の風呂である。
http://kino-ie.net/genba_073.html


「人研ぎ(き)」というコンクリートで成形したものもあった。
人研きは「じんとぎ(き)」と読む。古い民家の台所の流しにもあった。
前に文学研究科地理学教室関係の巡検豊崎長屋の貸し物件を
見に行った時の風呂場の様相を思い出した。



模倣から始まる製品開発。これはボイラの件でも同じ現象があった。
恐らく、昭和30年代くらいまでは模倣という技術習得と製造については、
日本ではかなり緩かった、というより認識が甘かったようだ。
どこぞの大陸の国の模倣に日本は悩まされているが、
昔は日本も欧米の模倣を堂々とやっていた。
この模倣から現代の技術立国、独自開発という強みを活かした状況に
転換するには、模倣からの脱却意識と、模倣時代に培われた
技術力がベースになっているようだ。
家電製品では、数々のモデルチェンジと他社との競争、
国外からの評価で随分鍛えられたが、
ボイラの方はエネルギー転換や用途の変化、熱機関として
使用される場所が変遷していったことで戦前期とは違う経過を遂げた。
戦前期は暖房用・給湯用として小型のボイラもあり、
高級住宅やビル建築では一般的な存在であったが、
現在では、暖房給湯は電気やガスによる小型化・個別化した
製品によるもので充当されている。
大きな建築物では用途を限って使用される場合や非常用で据え付けられている
ことがある。給湯器は小さなボイラである。
ボタンをポチッと押せば素直に湯が出てくる給湯器は非常にありがたい。