ずっとそばにある本 ⑤『中国任侠伝(正・続)』陳舜臣 文集文庫(1992/1994)

本書では、「任侠」といっても、日本で想定されるヤクザを指すものではない。

ここでの「任侠」とは、「義」を重んじること、
例えば他人のためには自らの命さえも顧みない行為、
ある志を遂げるために尋常ならざる決断を実行することを厭わない信念を指す。

始皇帝暗殺で有名な「荊軻・一片の心」のほかに、先に述べた「義」を
重んじる人々の人生模様が短編集として集約されている。

「自分もそうして何かに人生懸けたい!」と誰も?が思うだろうが、

なかなかそう甘くはない。「何かを得れば、何かを失う」という、

その覚悟が必要なんじゃないかと、何度か読み返してそう思う。

 

中国の歴史など知らなくても、物語の面白さに魅かる書物である。

実は、この本は2回目に購入しもので、最初に購入したものは…棄てられた。

その馬鹿馬鹿しい軽んじた行為を目の当たりにして、それからわたしは…

「自ら大切なものと思うものは、

 絶対に他人に触れさせない」

…ということにしている。この本もそうである。
私はこの本を、いつまでも、売らないし、捨てないし、貸したり、譲らないであろう。